ローカルワークストーリー
いまの自分は、好き=探究心=仕事=編集者!!

- 16石田 まきさんMaki Ishida
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- 十勝エリア | 帯広市
九州から東京、そして北海道へ

「東京で就職をすることを考えていると思っていた両親はびっくりしていましたね。好きな仕事と住みたい場所がひとつになったので仕方ないですけど(笑)」。そう話すのは、北海道帯広市のソーゴー印刷に入社して一年目の石田まき(24歳)さん。現在は北海道の雑誌『northern style スロウ』 編集部の編集者として、日々奮闘しています。
石田さんは長崎県の出身。北海道に移住する以前は、大学時代を熊本で過ごし、出版業界などメディア関係の仕事に就きたいと、一時期は大学を休学して上京し、都内のIT企業などでインターンをしながら、就職活動に励んだそうです。全国にある出版社の約8割が東京に一極集中している現状。自ずと東京で就職することが自然の流れと考えていた石田さんでしたが、最終的に選んだのは、九州でも、東京でもなく、北海道でした。

なぜ、石田さんは北海道に移住し、就職することを決めたのでしょう? 一見、穏やかな印象で物腰が柔らかい雰囲気の石田さんですが、色々とお話を伺っていく中で垣間見えたのは、内にある探究心と行動力に富んだいくつものエピソードでした。それが今に至っていることを、あらためて実感させてくれました。
突き動かしたのは決断力と行動力

左は姉
幼い頃から保育士になりたいという夢があり、地元の中高一貫校に進学。その当時について、石田さんは「実は小学生の頃、親にここに行きたいと言い出したのも自分からでした。その時は保育士になりたいと思い、保育士系の資格が取れる短大までそのまま行って、系列の保育園で働きたいと考えていました(笑)」。将来を思い描いて進むべき道を自分で切り開いて行く。そんな石田さんの決断力と行動力は、すでにその時から培われていたようです。
最初の転機が訪れたのは、高校への進学の時でした。中高一貫の学校ではなく、県内にある進学校に行くことを決意。「その当時は中学生ながら出版社に就職するには、大卒が一つの条件になるというのを何となく色々な情報でわかっていたので、大学に行かなければならないと思うようになりました」と石田さん。一貫校を飛び出して、長崎北高校に入学し、その後、熊本大学文学部コミュニケーション情報学科に進学。保育士になるという幼い頃の淡い夢はほどなく解かれ、中学生の頃には雑誌の編集者になりたいと思い描くようになったといいます。
読み始めたらドキドキが止まらない。。。

石田さんが出版という仕事に興味を持つようになったきっかけ。それは中学生の時、通学のバス停前にあった一軒の本屋でした。「バスを待つ間はずっと本屋で過ごしていました。ファッションも、音楽系も、漫画雑誌も。ずっと本屋にいられるくらい雑誌がものすごく好きでした。その結果、何本もバスを乗り過ごしてしまって(笑)」。
「中学2年生の頃には、学校の試験勉強をしなければならず、好きな雑誌を読むのも我慢していたけど、勉強の合間にも買っておいた雑誌『東京グラフィティ』がどうしても読みたくなって。読み始めたら、もうドキドキが止まらなくなるくらい動悸がして。その時、これを仕事にしなきゃダメだなと思うようになりましたね(笑)。ページをめくるたびに、ファーとなってドキドキする感覚は、雑誌だからなのかなと。色々な文化に触れられるのも、本ならではだと思います」と、大きなターニングポイントに。
将来の自分に模索の日々が続く

熊本で過ごした大学時代。石田さんは、はっきりしないと先に進むことができない性格から、大学2年の時には自分にとって大学で学ぶ意味とは何なのか悩む時期があり、2年生の前半を休学。国内をバックパックで旅したりして過ごし、それからまもなくして、もう一度勉強したいと強く思うようになり復学したそうです。

大学生活も終盤に差し掛かった頃。いよいよ就職活動を開始した石田さんは、卒業に必要な単位を取得していたこともあり、出版業界で働くならば東京に行こうと、大学4年生の時に上京を決意。大学2年で休学していたため、ふたたび半年間を休学して東京での生活を開始しました。「その時は熊本と東京を行き来すると交通費だけでも高くつくので、いっそのこと、東京に住んでしまえと(笑)。大学を休学するかたちでいったん熊本を飛び出しました。もともと出版をはじめ広く情報を伝える仕事をしたいと思っていたので、出版だけではなく、広くメディア業界をみてみたいと考えていました」
仕事と暮らし。大切にするべきこと

大学時代のインターンで松浦弥太郎氏と
一度は東京の荒波に揉まれ、いろんな会社を見てみたいとの思いで、上京してクックパッドや吉本興業などの企業でインターンを経験し、就職活動を続けたそうですが、そこでふたたび石田さんに転機が訪れます。
「東京で就職して、この街で暮らしている自分があまり楽しそうじゃないなと思ったんです。本当に自分が楽しいと思えるところで働こうと。その頃から、もともと学生時代からよく来ていた北海道が好きだったので、東京ではなく、北海道で働くことを考えるようになりました」。石田さんの東京での就職活動は、いつしか自分の考え方を変える大きなきっかけになりました。自分にとって大切なこと...東京に暮らしてみて改めて実感したのは、仕事だけではなく、暮らす場所も、自分に合っているかどうかということでした。

「ボラバイト」でお世話になった農家さんの食卓の味が忘れられない
石田さんが大学3年生の時、旅行で夏の北海道を訪れた時のこと。その当時、一時的に働きながら旅行することができる「ボラバイト」(ボランティアとアルバイトの中間に位置する活動)を活用し、短期間で道南の久遠郡せたな町にある農家さんに住み込みで働きながら旅行しました。純粋に土に触れたいとの思いから、北海道の農業を体験しながら旅行してみたいと、憧れと自分のフィーリングに任せて、北海道で過ごしたそうです。

「何よりも地元の長崎は山が多いので、北海道の空がとても広く感じました。ボラバイトでお世話になった農家さんに空いた時間に観光に連れていってもらったり、ボライバイト終了後に2週間ほど北海道を一人でまわってみたり。地元の生活を知るきっかけにもなりました。とても良いご家族に出会うことができて、その温かさにも触れて。北海道は土地だけではなく、心も広くて豊かな方が多いのだと、衝撃を受けたことも、北海道が好きになった理由だと思います。その時にふと、北海道に住みたいなと思いました」と、北海道との出会いを振り返ります。
「北海道」「出版」「考え方」

いよいよ就職活動も終盤に差し掛かった頃。北海道の出版業界で働くことを考えるようになった石田さんは、旅先で読んで知っていた『スロウ』という雑誌の存在を思い出しました。調べてみると、帯広にあるソーゴー印刷という印刷会社が作っている本だと知ります。「私自身、編集と記事を書くことの両方がしたいと思っていて、それを大切にしているのが、雑誌『northern style スロウ』の編集部でした。広告に左右されない雑誌媒体という強みがあり、つくり手が自分たちの伝えたいことを素直に発信していることや、編集者が記事を書くスタイルを一貫していることにも大きな魅力を感じて、ここしかないと思いました」。石田さんにとって、「北海道」「出版」「考え方」のすべての条件が一貫したことが、いまの会社を選ぶ理由になりました。

雑誌『northern style スロウ』は春・夏・秋・冬の季節ごとに年4回刊行している北海道発の全国誌です。2018年で14年目となり、「足元の豊かさに光を当てながら、わくわく北海道をつくる」を合言葉に、本づくりを通して、北国の暮らしや人、モノ、ストーリーを伝えています。

編集者一年目の石田さんが今、仕事の上で大切にしていることは「足元に豊かさの光を当てて、わくわく北海道をつくる」という雑誌の理念に基づき、すべての行動がそこにつながるように動いていくことなのだといいます。
仕事では、取材した方に記事の校正をお願いした時に、「ありがとう」や「自分のやりたいことがはっきりしました」という返事をいただくと、自分だけが書いていて勉強になったり、為になっているのではなく、相手にとっても役に立った原稿が書けたのだと、改めてやりがいを感じているそうです。お互いに気づきがあることに、仕事の楽しさやありがたみ、おもしろさがあるのだと。
好き=探究心=仕事=編集者

北海道に移住してからというもの、石田さんの休日は、ライフワークとなっている公園などに出かけての木の実探し。「とても癒されるんですよ」と笑みをこぼす、その本心に近づこうと、木の実に興味を持ったきっかけを聞いてみると、「大学の時ですね。ゼミの授業で熊本県水俣市の海の風評被害について、どうやって水俣のきれいな海を伝えることができるかを学ぶ機会があって。森が豊かだと海がきれいで、どんぐりを見れば、その森の豊かさがわかるということで、どんぐりの木が生えている場所に出かけて調査していました。その中で、木の実の奥深さを知り、今もなお、木の実を拾ってきては洗って干して。山のように溜まっていますよ。今はその活用方法を探っているところです(笑)」。

一方で、「仕事のオンとオフの切り替えがむずかしいですね」とぼやく石田さんですが、一つのことをずっと真剣に考え抜く姿勢、強い探究心や行動力は、まさに編集者としての大きな素質なのだと気付かされます。
将来的に仕事でやってみたいことは「写真も撮れる編集者になりたいです。大学の時にフィルム写真を撮って、友達と一緒にフリーペーパーを作ったり、シェアハウスのウェブサイトを制作するために撮影を手伝ったり、仲間と写真展を開いたりしていました。撮ることも楽しいです」と石田さん。取材して書いて、写真も撮れるマルチな雑誌編集者になっている日は、そう遠くはないかもしれません。
(2018年10月)
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