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HOME ローカルワークストーリー 富樫 一仁さん(有限会社 秀明ナチュラルファーム北海道)

ローカルワークストーリー

せたな町の自然が与えてくれた「奇跡」。

奇跡的な地形 せたな町との出会い

富樫さんは、幼いころから喘息、アトピー性皮膚炎を患い、一時は普段の生活にも支障を来すほどひどくなり、生きる道は自給自足する事しかなかったと言います。そんな時、農家の知人から肥料や農薬を使用しない自然農法を勧められ、藁にもすがる思いで生産者の道に入りました。平成13年から3年間夕張郡長沼町の新規就農のための実地研修で自然農法の米作りを学び、瀬棚郡今金町で就農。平成16年からせたな町へ移住し、平成17年に秀明ナチュラルファーム北海道を設立しました。

水質清流日本一に選出された後志利別川が流れ、1000m級の山々の豊かな自然に恵まれたせたな町。ミネラルが自然と共に循環している奇跡的な地形だと富樫さんは語ります。海・山・川・大地・自然をいっぱいに浴びた生き物達・そして自然と共に生きる人々は、ストレスなく幸せそうに過ごしている様にも見えました。富樫さんは、農地を探していると引き寄せられる様にここへたどり着いたと言います。ずっとイメージしていた風景が目の前に広がった瞬間「ここしかない」と確信した時の様子を素敵な表情で語ってくれました。

秀明自然農法の教え

秀明自然農法の教えは、「自然がすべてを教えている。自分の心を開き、清らかにして自然の声に耳を澄ませ、自然から学び、あらゆるものと心を通わせ合うこと」。富樫さんは、秀明自然農法を継続して行うことによって、薬に依存しない健康な身体を維持することができるようになりました。

同じ畑に毎年同じ作物を育てる「連作」は、慣行農業では、主要な野菜の多くのものが生育が悪く収量が低下する連作障害を起こすのが常識とされています。しかし秀明自然農法では、どの作物にも連作を推奨しているそうです。自家採種した種子が土になじむのとともに、土もまたその作物に慣れ親しんでいき、連作するほど、その圃場の土にはその作物を育むべき適応性が自然に醸成され、自家採種と連作を重ねるほど土と作物は本来の力を高め合うことができると言います。自然堆肥以外の不純物を混ぜることなく、土を尊び、土を愛し、土を清浄にすることによって、土が本来持っている力を発揮させる。秀明自然農法は聞けば聞くほど興味深いものでした。

「植物や空気、太陽、自然には全てに目がある」という富樫さん。マイナスの感情を持つ者は人間だけで、自然は愛情、感謝、すべてを受け入れてくれる目を持つのだと言います。愛情に満ち自然の中で作業していると体がどんどん良くなっていくのがわかるのだそうです。人の健康は自然と切り離せないと身をもって感じて来たと言います。自然の暖かい目の中で生活するせたな町の人々もまた、人情にあふれ、想いと想いが飛び交う素敵なサイクルの中で生活しています。過ごしている様子に、自然と共に生き自然の愛情を浴び生活している富樫さんとせたな町に大きなパワーを感じました。

せたな町の自然環境と秀明ナチュラルファーム北海道の思いが調和して生み出された作物や加工品

秀明ナチュラルファーム北海道では、水稲、大豆、菜たね等の栽培、そしてこれらの原料を使用した加工品の製造を行っています。自然を尊重し自然の力に順応して暮らすという理念と、恵まれたせたな町の自然環境と、秀明ナチュラルファーム北海道の思いが調和して生み出された作物や加工品は多くの反響を呼んでいます。

せたな町で育った作物は、芳醇な何とも言えない温かい味がするそうです。自然界のあらゆるものは、月や太陽の影響を受けていて、月の引力が地球上の液体に与える影響や月の満ち欠けや、満月と重力と水の関係まで意識し農作業などに生かしているのだそう。光の波長で集まってくるバクテリアの種類や、夕日を浴びると旨味のあるバクテリアが集まってくる事。光が植物にあたり根を通し土の中に伝わり、その光をめがけて、波長に合わせたバクテリアが作物に集まってくる事。土の中にも根から伝わる光や今まで繋いでくれた植物が受けた光を引き継いだ種から放出される光の世界がある事。プリズム、バクテリア、抗酸化、光のバランスなど、そんな自然のサイクルから計算されて作られた富樫さんの農作物にはものすごいパワーを感じます。

都市住民や料理人と交流を重ね、新しい農業の世界をつくる「やまの会」

新規参入や有機農業の下地があったせたな町で、「農業者のコミュニティを創り、独自ブランドを生みだせないか」とその試みを実現するために有機農業者グループ「やまの会」が誕生しました。富樫さんはその代表を務めています。5人の若手有機農業者が自発的に集まり、生産した食材を軸に料理人などとつながり、交流の輪を広げています。活動は、経済第一主義に走らず、さまざまな人たちとの交流のなかで、環境を守りながら豊かな有機農業の世界を追求するといった、北海道内でも貴重なものとなっています。

活動の1つ「やまの会レストラン」は、仲間たちに声をかけ、野菜や畜産物などを持ち寄り、食事会を開いて交流することから始まりました。会員の食材を使い有名シェフがコース料理を作り、それを味わってもらうイベントで、シェフや都市住民らが一緒に農場で料理を作ります。ネットで告知するとすぐに満席になるほど好評だそうです。

やまの会は、5人のメンバーだけではなく、会の魅力に引き寄せられたたくさんの仲間たちとともに活動を行っています。都市住民や料理人、クリエーター、Uターン農家と新規参入者がバランスよく参加しています。戦隊ものも人気アイドルグループもだいたい5人組だとユニークなお話をしてくれました。せたな町の5レンジャーが、まちを盛り上げてくれることに違いないでしょう。

農業と共に奏でるハーモニー

以前は札幌の音楽事務所に所属しプロを目指し、ロックミュージシャンとして活躍していた富樫さん。人気バンドグループと肩を並べるほどの腕前でした。しかし「アレルギーの症状が一時は普段の生活にも支障を来すほどひどくなり、音楽活動を続けることを断念するしかなかった」と言います。農家の道を選ばなかったらどんな人生を送っていましたか?との質問に、迷わず「音楽をしたかったですね」と答えてくれました。富樫さんは農業の傍ら今も音楽活動を続けています。「力を抜いてやっている今の方が、音楽を通して素敵な出会いが多いんですよ」と爽快な笑顔で語ってくれました。

そんな富樫さんの自然の恵みを含んだハーモニーは、「せたな町を知ってほしい」というコンセプトで続けているスローフードイベント『海の幸、山の幸と共に「美味しい、楽しい」食とコンサート「海フィール」』で聞く事ができます。

せたな町が与えてくれた体験と感謝を多くの人々に伝えて行きたい

富樫さんは、現在ではアレルギー数値が24000IGE(健康な大人の平均値は170〜240IGE)もありながら全く薬に依存せず健康な体を維持することが出来るようになったと言います。そして、数年前にひどいアトピー体質を克服し健康に自信が持て、次なる大きな目標に進むことを決意したそうです。「命がけで健康になるためにすべてのエネルギーを注ぎ込んできました。このエネルギーを、これからはアレルギーに苦しむ人々のために、そして健康を求める人たちのために注ぎたい。そして、せたな町が与えてくれた体験と感謝を多くの人々に伝えるためにエネルギーを注いでいきたい」と語ってくれました。

新しいことが好きだと言う富樫さん。せたな町の魅力と富樫さんの魅力にどんどん引き寄せられる人々の輪と奇跡の数々。今、せたな町が輝き始めます。

(2018年2月)

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