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HOME ローカルワークストーリー 近藤 舞子さん(株式会社 K.DEPART)

ローカルワークストーリー

「消滅可能性都市」から「持続可能な都市」への挑戦。

東京で経験を積んだ20代

北海道新幹線と合わせて開業した道の駅「みそぎの郷 きこない」で、2016年から、レストラン「どうなんde's Ocuda Spirits(ドウナンデス オクダスピリッツ)」とパン屋「コッペん道土(コッペンドット)」を経営する近藤舞子さん。地産地消の先駆者として世界に名高い奥田政行シェフが監修する「どうなんde's」は、道南の新鮮な食材を生かした本格イタリアンが味わえる店として、地域の人々や観光客の人気を集めています(写真:奥田シェフと近藤さん)。

近藤さんは道南最大の街、函館市で生まれ育ちました。高校卒業後はいったん地元で就職をしましたが、「雑貨やインテリアの仕事に就きたい」という夢を実現するため、Wワークでお金を貯めて上京。東京・自由が丘の人気雑貨店に就職しました。さらに、23歳の時には店長に抜擢され、商品の仕入れやディスプレイ、接客、スタッフ管理など幅広い業務の経験を積みました。 「一緒に働くスタッフがみんな『将来は自分の店を作りたい』という志を持っていて、活気のある職場でした。どうしたらお店がもっと良くなるのか、お客様に喜んでいただけるのか…仲間とともに真剣に取り組んだ経験は、自信となり、今に生きています。20代のいい時期を、素晴らしい仲間と過ごせて幸せな毎日でした」

父の病をきっかけに、故郷へのUターンを決意

そんな近藤さんに転機が訪れたのは27歳の時。函館に住むお父さんが病に倒れたのです。その後、お父さんを看病するお母さんも体調を崩し、近藤さんは「函館に戻ろう。函館で自分の店を開こう」と決意しました。しかし残念ながら帰郷目前にして、お父さんは亡くなられました。「気丈な母は『私のことなんて心配しなくていい、自分の夢に向かって進みなさい』と言ってくれたんですが…父の看病を通じて家族や故郷の大切さを改めて感じた私は、予定通り、函館にUターンしました。戻ってすぐ、知人から紹介されたのが今の夫です。私は、父が導いてくれたんだと思っています」

木古内町との「お見合い」

「実は、木古内町出身の夫と出会うまで、木古内のことは名前も場所も知らなかったんです」という近藤さん。そんな彼女に小さな町での暮らしが合うかどうか心配したご主人は、結婚前に幾度か、近藤さんと木古内町との「お見合い」を試みたのだそうです。「例えば、木古内町でお祭りがあった時、木古内商工会女性部の中に一人で放りこまれまして…そうしたら、突然現れた私を、女性部の皆さんが大歓迎してくださった。『よく来たね』『これ食べなさい』『こうしたらいいよ』って本当に親切にしてくださって。私も人見知りするほうでありませんから、皆さんとすぐ仲良くなって、とても楽しい時間を過ごすことができました。そんな様子を見ていて、夫も『舞子さんは田舎に嫁いでも大丈夫だね』と」

近藤さんは初めて木古内町に行った時から今も、木古内の人々の温かさに助けられている、と語ります。「いい意味で人と人の距離が近くて、壁がありません。皆さん本当に親切です。私は今、町長ともLINEでつながっていて、何かあればすぐ気軽に相談できるんですよ。木古内の皆さんの温かさが、私のパワーの源です」

レストラン「どうなんde's Ocuda Spirits」開業

結婚後、木古内の魅力を多くの人に知ってもらいたいと考え、宿経営や特産品「はこだて和牛」を使った商品開発などを始めた近藤さん。そんな彼女に木古内町役場から「北海道新幹線開業に絡んだビッグプロジェクトを担当してもらえないか」と相談があったのは、2014年。木古内駅前に新設される道の駅に、奥田政行シェフが監修するイタリアンレストランをオープンする計画があり、その店の経営者として白羽の矢が立ったのです。「お引き受けするかどうか…悩みに悩みました。でも、やろう!と決意してからは『どうしたら出来るか』に頭が切り替わりましたね」近藤さんは2015年10月、レストラン開業に向けて新会社、株式会社K.DEPART(ケイ.デパール)を設立。社名には「木古内の旅立ち」という意味を込めました。「準備が始まってから開業までは、記憶にないくらい大変でした。とにかく仕事量が膨大で寝る暇もなく、日々追われているような感じで。…実は、開業2年を迎えた今も変わらず忙しいです(笑)。両親はいつも私に、『真面目にやっていれば出来ないことはない。努力は裏切らない。』と言ってくれました。私は両親の言葉を支えに、この壁もいつか超えられるチャレンジなんだ、と思って日々、仕事に向かっています」

次なる挑戦~首都圏で木古内をPR

近藤さんは2016年12月、神奈川県横浜市にコッペパン専門店「コッペん道土 市が尾店」を開業しました。「木古内町のことをもっと多くの人に知っていただくためには、首都圏にアンテナショップが必要だと考えたんです」近藤さんは店のオープンチラシに、こんなキャッチコピーを載せました。「消滅可能性都市、全国第5位の北海道の小さな町で行列のできるパン屋が市ヶ尾に上陸」…木古内を「持続可能な都市」にするための挑戦です。

店では注文を受けてから具をはさむことにより、ふわふわのコッペパンを提供。全30種類の中には「北海道牛コロッケ」、「鶏ザンギ」、木古内町の特産品「みそぎの塩」を使った「プレミアムみそぎの塩ミルククリーム」など、北海道らしい具を用意しました。また、店内黒板には木古内町のPRや、神事「寒中みそぎ祭り」の案内を表示するなど、木古内町への関心をもってもらう工夫を凝らしています。美味しさと話題性の高さから同店は評判となり、またたくまに、行列が出来るパン屋となりました。

「今後、この店を通じて、良い人材との出会いにも期待しています。パンをきっかけに木古内の魅力を知ってもらい、『そんな素敵な町なら住んでみたい』と言ってくださる方を採用できたら最高です(近藤さん)」

これからの目標

近藤さんに「これからの目標」を伺いました。
「今はまだ、商品づくりや人材育成の真っ最中で、『木古内の価値を創っている』段階です。将来、価値を創造できたら、日本にとどまらず世界に木古内を発信していきたいと思っています。私が好きな北欧やイタリアの方々にも『KIKONAI』という町の存在を知ってもらえるようになるのが夢です」

雪の日の夜20時。JR木古内駅舎から外を眺めると、「どうなんde's Ocuda Spirits」が駅前を明るく照らしていました。もし、このレストランが無かったら…駅前の印象は大きく異なっていたことでしょう。地域に根差しつつ、さらに、首都圏でも勝負し、夢は世界へと広がる近藤さん。これからも彼女は、そのひたむきさで仕事に取組み、仲間を増やし、木古内町の未来を明るく輝かせていきます。

(2018年2月)

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